いざ福祉的活用を考えても、様々な問題がおこりえます。
福祉的活用をする際につまづきがちなポイントと解決法を実例をもとにご案内させていただきますので、ぜひ参考になさってください。

空き家オーナー様のケース
(活用前)

活用目的の事業が法令の規定に適合しなかった。

都市計画法、建築基準法、消防法、自治体の条例などで、空き家等のある場所では所有者が計画する事業の運営が認められない場合があります。

計画を具体化する前に、その場所で運営できるかを確認する必要があります。
逆に法令では通常禁じられていても、特例で承認される場合もあります。
自治体の関係課や制度に詳しい人に確認することがポイントです。

改修費用がかさみ、資金が足りなかった。

耐震性が基準を満たしていない建物だと、事業では運営できない場合があります。
特に居住系の事業等の場合には、施設基準で廊下幅や避難路の確保、バリアフリー化、消火設備の設置を求められることもあります。
また、現在の建物が建築確認を受けていなかったり、証明書(検査済み証)を保存していないと、改築・改修工事が認められず、建て替えるしかない場合もあります。
このような場合には、改修等の金額が予定を大きく超えてしまいます。

計画を具体化する前に、その建築物で運営できるか、改修等を行う場合に、資金が不足しないかを確認する必要があります。
耐震診断や耐震改修工事に自治体が補助金を交付したり、福祉事業所の開設に当たり、補助金を交付する自治体もあります。
自治体の関係課や制度に詳しい人に確認することがポイントです。

活用してくれる団体や人が見つからない。

活用して運営する団体や個人が見つからない、賃貸や譲渡の条件が折り合わないといった場合があります。

福祉事業者で構成される団体、自治体の福祉関係課や地元の社会福祉協議会、地域包括支援センターなどに相談すると情報が得られる場合があります。

周辺住民の理解が得られなかった。

理解が得られないことの理由は様々です。
人が集まることによる騒音や通行への支障など物理的なことへの不安のほか、活用方法への誤解や偏見の場合もあります。

理由によって当事者間で直接合う、運営者から説明する、自治体の所管課の協力を得ることも考えられます。
その場で事業を運営するには地元との連携が重要です。状況によってはプランの見直しも検討しましょう。

空き家オーナー様のケース
(活用後)

運営する法人等が撤退してしまった。

撤退の理由はさまざまですが、計画した期間の運営ができないのは残念なことです。

計画したとおりの運営をしてくれる事業者(団体、個人)であるかの見極めが重要です。
特にグループホーム等居住系の事業に活用する場合には、入居者の住まいが失われる恐れもありますので、慎重に進めましょう。

建物の破損などにより使用できなくなった。

老朽化による場合、災害による場合などがあります。

老朽化が原因の場合は、あらかじめ老朽化への対応を考えておくことがポイントです(補修や改築して継続、活用中止)。
災害による場合は、保険や法令等に基づく復旧策がないか、自治体の防災関係課など関係者に相談しましょう。

福祉事業者様のケース
(活用前)

条件に合う物件が見つからなかった。

計画している地域に福祉的活用に使える空き家がない。
空き家はあるが所有者との条件が合致しない、周辺の理解が得られない等の場合があります。
地域の通い場に活用できる空き家の情報は、不動産事業者も持っていない場合が多いようです。

空き家バンクを設置している自治体もありますが、登録件数の少ない傾向があるようです。
これまでの事例でもねばり強く探して見つけた場合が少なくありません。広く協力を求めて探すことがポイントです。

物件が法令の規定に適合していなかった。

法令の定めでその場所では計画している事業の実施が認められない、道路の幅が不足し建て替えができないといったまれなケースもあります。
建物の耐震性がない、増改築部分の建築確認を得ていなかった。
そのほかバリアフリーや防火等の基準を満たしていないといった場合も結構多くあります。

資金面も含めて、適合させることができるか検討することになります。

周辺住民の理解が得られなかった。

理解が得られないことの理由は様々です。
人が集まることによる騒音や通行への支障など物理的なことへの不安のほか、活用方法への誤解や偏見の場合もあります。

理由によって当事者間で直接会う、所有者から説明する、自治体の所管課の協力を得ることも考えられます。
他の場所で類似の事業があれば、その状況を説明したり、見てもらうことも検討しましょう。
その場所で事業を継続するには地元との連携が重要です。協力を得られるようになるか否かの判断が重要です。

福祉事業者様のケース
(活用後)

賃借契約期間が満了し、所有者が他の用途に活用するなど契約を継続できなくなった。

相続等により所有者が交代した場合によくあります。

その場所の活用がうまくいっている場合には、可能な範囲で使えなくなる理由を確認しましょう。
相続の場合は新たな所有者に対し、行っている事業の効用を説明したり、資金面など他に理由があれば、解決できないか一緒に考えるなど。
現在の運営に課題や問題があれば、その重要度によっては課題解決や充実を図る機会ととらえて、計画を変更ことも考える必要があります。

老朽化が進み、建物が使用に耐えなくなった。

建物の耐震性の低下や雨漏り、水回りの不具合など、利用者やスタッフの安全が確保できない状態では活動はできません。
門扉や玄関の破損などもひどければ利用者も安心できません。

所有者と連携し、定期的に点検したり、点検の状況を把握しておきましょう。

法令や施設基準の改正などにより、事業が実施できなくなった。

福祉施設や事業所では、事故防止や防災のため、施設基準や人員配置基準が改正され、厳しくなることがあります。

既に事業を運営している場合には、経過措置などにより認められることもあります。
日頃から制度改正等の動向に注意を払うとともに、内容を許認可の担当官庁や制度に詳しい人に確認しましょう。

周辺住民からの苦情が多く、事業継続に支障が出てきた。

活動を開始してから、騒がしい、臭いが流れてくる、知らない人たちが出入りして不安等の苦情が寄せられる場合があります。

苦情の内容や原因を詳しく分析しましょう。誤解や誤った情報の場合は、正しい情報を提供しましょう。
非がある場合は改善できるか検討しましょう。
早期に冷静に対応することが重要です。日頃からの交流が重要です。
空き家問題に限らず、危機管理やアンガーマネジメントの技術など、日頃からマネジメント力を高めておきましょう。

運営に必要な資金やスタッフを確保できなくなった。

制度改正により報酬が減額されたり、人員を増員することが求められる場合があります。
スタッフの急な退職や募集しても応募してこないことも。

トラブル発生の予兆を見逃さず、関係者に相談するなど早期に対応することがポイントです。

空き家を活用するためには、様々なハードルを乗り越える必要があります。
法律や福祉制度等、信頼して相談できる専門家を確保しておきましょう。
日頃から所有している空き家の地域、関係自治体や団体とのつながりを深めておくことがポイントです。