1930・40年代生まれの第1世代は2030年前後をピークに退出すると推計され、空き家の発生のさらなる増加につながると考えられます。
ただし、これが空き家ストックになるか否かは、相続・売買による継承者の有無によります。

1960・70年代生まれの第2世代は、人口規模は第1世代と同様ですが、大都市圏への集中、非婚化等の家族形成行動の変化、女性の就業率の上昇等を背景に住宅立地選好が第1世代とは異なり、また持家を指向する層の取得はほぼ終わっています。
つまり、継承されにくい空き家が増える方向にあると言えます。
その次の1990・00年代生まれの第3世代は規模が3分の2に縮小し、空き家ストックを解消する力は大きくありません。

10年後を見通すと、空き家ストックはさらに積み上がっていく可能性が高いと考えられます。
郊外の計画開発戸建住宅地などでは、こうした現象が集中的に起きる可能性もあります。
これは空き家の福祉的活用にとって機会の拡大につながりますが、空き家対策としてはそれだけはなく、新しい居住世帯が空き家を取得する(除却・建替を含む)ための方策を考えることも必要です。

高齢者を対象とした福祉的活用のニーズは顕在化しており、制度的支援もあり、取り組みを開始しやすい環境ができています。
しかし、住宅地としての持続性を考えると、同時に子育て支援のニーズにも目を配った空き家の福祉的活用の可能性も掘り起こすことが必要です。
空き家活用を点から面へ広げ、若い世代にも暮らしやすい住宅地であることを発信するなどと通して、居住の促進につなげる努力を居住者、事業者、行政が協働して進め、コミュニティの魅力の向上を図っていくことが求められます。

大江 守之 慶応義塾大学 名誉教授