空き家×福祉について
気になるコツを聞きました!

住民主体で展開-ふれあい交流・生活支援から地域の課題解決まで
平塚市町内福祉村

心豊かに暮らせるまちを目指して
~地域住民を主体とした支え合い・助け合いの仕組みづくり~

コミュニティが脆弱化し、人々のつながりが希薄になりつつある中で、人々が交流し助け合える地域社会の構築が強く求められています。

地域住民の自主的、主体的な参加をベースに、支え合い、助け合う仕組みづくりを目的に創られた神奈川県平塚市の「町内福祉村」。
厚労省が総合事業の参考例の一つに挙げるなど、全国的にも注目されています。

サロン (八幡町内福祉村)

プロフィール

  • 営団体:八幡地区町内福祉村協議会
  • 施設名:八幡町内福祉村
  • 事業内容:高齢者・共生
  • プロジェクト開始時期:平成20年

空き店舗を活用した、生活支援活動とふれあい交流活動の拠点「八幡地区町内福祉村協議会」

平塚市のJR平塚駅の北部に位置する「八幡地区町内福祉村協議会」の会長 鳥澤英夫さんにお話を伺いました。

まず、「八幡町内福祉村協議会」の活動をお聞かせください。

鳥澤 「ふれあい交流活動」と「身近な生活支援活動」の2本を柱とした活動を行っています。

「ふれあい交流事業」では、どのような活動をされているのでしょうか?

鳥澤 地域の方が気軽に立ち寄れる場を週4日午前と午後に設け、交流や情報交換をしております。そこにコーディネーターが常駐し、相談に応じるほか、毎月「文化活動」として、塗り絵、折り紙、手芸、体操などの教室や子育てサロンを行っています。

不定期に行う活動としては、クリスマス飾り教室、マジック教室などのほか、パークゴルフ、ウォーキング、ハイキングなどの運動も実施しております。
独自の活動以外に、公民館と共催で行う活動もあります。

教室は、主に拠点で行いますが、人数が多い場合や共催のイベントについては自治会館の部屋を借りて実施しております。年間の活動日数は200日以上でした。

事務室

「生活支援活動」では、どのような活動をされているのでしょうか。

鳥澤 地区内に住む援助が必要な人を対象にゴミ出し、簡単な枝下ろしや草取り、ちょっとした大工仕事などの生活支援を実施しており、利用者は無料で利用できます。

活動について、どのように住民に周知されていますか?

鳥澤 3ヶ月ごとに会報を発行しています。会報は自治会に協力してもらい全戸配布していますが、自治会に入っていない人もいるので、福祉会館、市役所などにも置いております。

活動状況についてお聞かせください。

鳥澤 2019年度の活動実績によると、年間の活動件数は相談 20件、生活支援137件、ふれあい広場2222人、運動体操198人、教室などの文化活動271人、子育てサロン161人と多くの参加がありました。

一方、支え手については、コーディネーター70人のほか、サロンを運営するふれあい交流部15人、生活支援部32人がボランティアとして運営に携わっています。
その中には兼任している人もいるので実質人数は90人です。
ボランティアの年齢層は主に60代から70代です。

この建物を借りることになった経緯をお聞かせください。

鳥澤 当時の会長が、八幡地区は南北に長いので、その中心部に設置したいと考え探していたところ、ちょうどこの場所が空いたと聞いています。
この建物は平塚駅から続くバス通りに面しており、利便性の高い場所にあります。

以前はラーメン屋と和菓子屋として利用されていました。
2階建ての建物の1階部分を賃借して利用しています。2階の一部は住まい、その他は倉庫になっております。

築40年以上の木造2階建の1階にある2部屋(1部屋、約27㎡)はそれぞれ店舗として利用されていたため、間仕切り壁で仕切られています。
壁を取り除き一体的な利用を考えましたが構造的に難しいため諦めたそうです。
現在はサロンと事務室に分けて利用しています。
事務等経費は市からの補助金です。

この活動をやっていて良かった点と課題をお聞かせください。

鳥澤 どんな教室やイベントを行っても人が集まることや、草取りやゴミ出しなどの生活支援が地域の人に喜ばれていることを聞くと、やっていて良かったと思います。 

課題は、福祉村の活動が地区の方に十分知られていないことです。特に生活支援については、自ら依頼する人が少ないため、地域包括支援センターや地区内の民児協(民生委員児童委員協議会)、福祉団体等と情報交換しながら進めています。

人に支援されることがいいことではないと思う方が多いように感じます。向こう三軒両隣という雰囲気が広がっていくといいのですが。

草取り

健康チャレンジ教室

住民が活動しやすい環境整備と空き家の活用

町内福祉村について、平塚市福祉部福祉総務課地域福祉担当の坂田様と木川様にお話をお聞きしました。

まず、町内福祉村の目的や拠点の整備のプロセスをお聞かせください。

坂田 町内福祉村事業の目的は、地域住民、平塚市の協働により、地域住民の自主的、主体的な参加を基本に、お互いに支え合い、助け合いながら地域に住み、誰もが安心して生活できる仕組みを作ることです。

新たな設置については、市が主体的に行うのではなく、地域の合意を大切にしています。
具体的には、自治会、地区社会福祉協議会、地区民生委員児童委員協議会等の総意がある場合に整備が進められます。

市は、拠点の整備、活動費の援助、家賃補助、情報提供など住民が活動しやすい環境整備を行っております。

町内福祉村仕組み

町内福祉村のネットワーク

現在までの町内福祉村の設置状況と今後の計画についてお聞かせください。

坂田 町内福祉村は、1999年から現在(令和2年12月)まで市内に18ヵ所設置されました。今後、地区公民館区に順次、設置を計画しています。

福祉村開設地
福祉村名称

町内福祉村開設地域

活動拠点の選定はどのようにされていますか。

坂田 地区住民が設立した町内福祉村運営協議会が中心となり、活動に適した場所を選定します。活動は常設の拠点だけではなく、自治会館や地区公民館などの地域資源を活用することができるため、多様な活動が期待されます。

あさひの絆(旭南地区町内福祉村)

ひだまりの里(吉沢地区町内福祉村)

空き家活用についてお聞かせください。

坂田 現在4ヵ所が空き家や空き店舗活用をしております。主に運営協議会が家主と家賃を交渉し、賃貸借契約を行うことになり、家賃は平塚市が全額補助しています。

地域住民主体の運営の継続性

町内福祉村ができてから現在まで21年が経過していますが、運営状況はいかがでしょうか。

坂田 現在のところ、運営が立ち行かなくなった地区はありません。
ただ、例えば生活支援の活動回数が400回の地区もあれば、少数の地区もあり、地区ごとに支援には幅があります。
また、地区からは、後継者について課題を抱えていると相談を受けることも多く、試行錯誤されている地区もあるようです。
役員等の固定化を防ぐために、会長、副会長、事務局長の任期を決めて順番に昇格するシステムをつくり新陳代謝を促している地区では、新しい視点による活動が次々と生まれています。

町内福祉村が地域に生み出した新しい価値

町内福祉村が地域にもたらしたことは何でしょうか?

木川 「ボランティア活動をしたい」「身近な地域で貢献したい」といった住民ニーズの受け皿になっていると同時に、これまで何らかの理由で地域活動に参加できなかった人たちにとって、地域活動への入り口になっています。
活動への参加を通して、生きがいを創出し、地域の中で人とのつながりをつくることができます。 

拠点で行われるサロン活動など、誰もが、いつでも、気軽に、立ち寄れる場ができたことで、ちょっとした相談ができるようになり、身近な生活支援の対応や専門機関などへのつなぎをスムーズに行うことができるようになりました。
地域で何か問題が起きた時に、地域の精通したコーディネーターを通じて解決されることも多く、よりスピーディな解決に結びついています。
このことから、この仕組みが地域の解決能力を引き出していると思います。 

「地域の中で困っていることは何か」「どのようにすれば解決できるのか」など、地域の中で話し合う機会が増えたことにより、福祉の課題だけではなく、地域の課題に対する取り組みが多くみられるようになりました。
具体的には、「通学時の見守り」、「通学路のごみ拾い」「小学生対象の寺子屋教室」などです。町内福祉村の利用者の多くは高齢者ですが、このような新たな取り組みを通して、子供や障がい者など、世代を超えての交流もできるようになりました。

町内福祉村の活動により多くの方々の参加を得るためには、気軽に立ち寄れる立地や雰囲気のある場所に拠点を設置することが好ましいと考えています。
平塚市の考え方としては町内福祉村の活動拠点として平塚市の公共施設である福祉会館や地区公民館内に設置することを原則としていますが、それが難しい場合には空き家や空き店舗を活用するメリットはあると考えています。

地域に福祉文化を根付かせるためには、まず必要なのはそこに住む人たちの意識変革と参加がカギだと言われています。
高齢化が進む中で、どうしたら安心して暮らせるか、そのためにはどのような町にしたらいいのかを住民自身が自分の問題として捉え、方策について自ら提案し、実践できるような場を持つ町内福祉村は、まさに地域住民の意識改革を促し、参加へとつないでいると考えられます。
町内福祉村は、地域の個性や潜在力を生かしながら、支え合いの輪を広げる可能性のある仕組みになっています。

詳細調査データ

物件について

  • 所在地:神奈川県平塚市西八幡
  • 構造・階数:木造・2階建(利用は1回のみ)
  • 建設時期:1960年代
  • 改修工事:特になし(会員による改修)

資金について

  • 源・運営資金:補助金/利用料/その他 
  • 運営費補助金:有
  • 設置費補助金:無